【実姫SIDE】


「これ、矢野センが実姫にって」


昼休みに教室に来た和馬が、あたしの手のひらに見覚えのある飴を落とした。


「なんて言ってた?!」


過剰な反応を返したあたしに、和馬は少し驚きながら答える。


「別に……。ただの飴って言ってただけだけど……」

「……―――」



『ただの飴』


その言葉に、急に涙が溢れ出した。


「実姫?」

「……あれ? や、ごめん……」


目の前にいる諒子と和馬が、突然泣き出したあたしを驚いた表情で見つめる。

それに気付いても……、止まらなかった。


「……っ、ごめ……、」



もう、この飴が何の意味も持たなくなってしまった事が、悲しくて……。

本当に先生との関係が終わった事を、突きつけられたみたいで。



悲しくて

悲しくて……



『痛み止め』

そう笑う先生の笑顔が頭を過ぎる。




先生がくれた、飴の薬は

甘すぎるくらいの、魔法は……


もう、効かないんだ。





もう

解けたんだ―――……