……でも。


あたしは小さな瓶の中に転がる飴を、ひとつ手のひらに取り出してゆっくりと口に運んだ。


『忘れ薬』じゃない……。

先生の、優しさが詰まった飴だから。


……だから、今だけでいいからあたしを慰めて。




明日からはちゃんと頑張るから。


何でもない顔して、先生に『おはよう』って笑うから。



……―――でも。


先生は、もう笑い掛けてくれないかもしれない。


話してくれないかもしれない。




『和馬と付き合いたい』

『普通の彼氏が欲しい』


そんな嘘で、先生を傷付けたんだから。



先生……、ごめんね……


ごめんね―――……



口の中に広がる甘さが、先生の優しさばかりを思い出させて、溢れ出す涙が止まらない。



きっともうもらう事のない、いちごミルク味の薬が、

効力を失ったまま口の中で溶けた。