鞄を持って鍵を閉めてから校舎に向かう。

同じ敷地内にある寮から学校までの距離は500メートルほど。

5分もあれば十分な距離に、あたしの足取りは軽かった。


始業のチャイムに余裕で間に合ったあたしは、げた箱に行こうとして……その横の掲示板前に溢れ返る人だかりに気付いた。

あ……そっか、クラス替えか。


そう気付いたところで、目の前の人ごみに飛び込んでいくのには少し抵抗があって。

どうしようかと思いながら、掲示板を遠巻きに眺めていると……その中から弾き出されるようにして出てきた諒子と目が合った。


「あ! 実姫!!

そんなとこで何楽してんの?! あたしなんか見てよ! この頭!!

途中誰かに引っ張られたし!! 超むかつく」


諒子が一人で怒りながら、自分の頭を指差す。

諒子の人先指の先で、自慢のゆる巻きパーマが確かに少しだけ乱れていた。

今の苦情は、絶対後ろにいる人達にも聞こえてると思うんだけど。

……そんな事気にする様子もない。


諒子の代わりに、怪訝そうに向けられる視線を気にしながら、諒子をなだめる。


「大変だったね……で、あたしのも見てくれた?」


鏡を渡しながら聞くと、諒子が髪を手櫛で直しながら口を尖らせた。