「冗談じゃないよ。……本気。

……和馬と付き合う事にしたから」


震えそうになる声を、必死で繋ぐ。

逸らしたくなる目で、必死に先生を見つめる。


……嘘を、見破られないために。

先生を、騙しきるために。



あたしの視線の先で、先生は片頬だけ口許を緩ませて笑った。


「嘘つくなよ。

おまえ、あんだけ清水は幼なじみとしか見られないって言ってたよな?」

「……告白されて、よく考えたら和馬の事好きかもしれないって思ったの」


平気なふりをして、嘘の言葉を並べる。

きっと、必要になると思って用意していた言葉。

何度も頭の中で繰り返した言葉なのに……。


あたしの口が

声が

頭が

心が

身体中が、拒否してた。



先生にそれを伝えようとすることを……、身体中が力いっぱい拒否してた。


それでも口を開こうとして……。

でも、先生の香りの混じる空気が身体に入り込んだ途端、一気に涙腺が緩んで。



何も言えずに口を結ぶ。