先生……

あたし、知ってるんだよ。


あの時、教頭にもっとひどい事言われたんでしょ……?







『親もいなかった人が生徒を持つなんて、やっぱりできるハズがないんですね』


『生徒に教えるような事、矢野先生にあるんですか?』





和馬に、聞いた……。


……先生。

嘘は嫌いなんでしょ……?




『大丈夫だよ。おまえが考えてるような事は言われてねぇし。

おまえは何も心配する事ないから』


そう、言ったじゃない。


ダメじゃん、嘘ついちゃ。

大嫌いな嘘ついちゃ、ダメだよ……。




……―――でも。

先生にそんな嘘つかせたのは、あたしだよね……?



あたしが、先生に嘘付かせたんだよね……?

あたしを安心させるための笑顔を作らせたんだよね……?



先生……

胸が痛いよ。


優しい嘘に……胸が刻まれたみたいに痛い。




先生、ごめんね……