『実姫は分かりやすい』

……あたし、の……せい……？



何も言えずにいるあたしを、吉岡さんがキッと睨みつけるように見つめた。


「好きじゃないなら、清水先輩をとらないでっ……！

いい加減な気持ちで付き合ったりしないで下さいっ。

傷つけたりしないでっ……！

あたしは、ずっと前から清水先輩だけが好きだったんだからっ……」

「……」

「……先輩が、清水先輩を傷つけるなら、あたし、バラしますから。

清水先輩だけがつらいなんて、許せない―――……」



何も、言えなかった。


吉岡さんの和馬への想いが、痛いほど伝わってきて……。

純粋な想いが、真剣な目が、自分の先生を想う気持ちと重なって……。


何も、言えなかった。



気持ちに応えられないのに、和馬の優しさに甘えてるのは、自分でも分かってた。


『大丈夫だから』

……そんな、先生の言葉に甘えてるのも分かってる。





ダメだったんだ……。



今回だけは、和馬に甘えちゃダメだった。

いくら和馬がいいって言ったって、それに言い切られちゃダメだったのに―――……