「いやね、明日の登校監督代わってもらえないかと思いまして。
明日、テニス部の朝練にどうしても出なくちゃならなくなりましてね……」
「ああ、いいですよ。……でも、そんな事でしたら電話でもよかったのに。
すみません、わざわざ出向いてもらっちゃいまして」
先生が苦笑いしたのが、声で分かった。
あんな事言ってるけど、本心は……『そんな事でわざわざ来るんじゃねぇよ』とか思ってるんだろうな。
そんな先生の態度を信じたのか、島田は同じように笑った後、本当の理由を告げた。
「いやー……実はね、教頭に見てくるように言われたんですよ。
矢野先生、生徒に告白されたりしてるでしょう? だから寮に生徒を入れたりしてるんじゃないかって。
生徒のたまり場みたいになってたら問題だからって……本当にあの人にも困りますよね」
「……俺、どんだけ怪しまれてるんでしょうね」
また一つ苦笑いを零す先生。
余裕を見せる先生とは違って、あたしは島田の言葉にすっかり不安を募らせていた。
だって……
偵察させるほどに先生を疑ってるって……
嫌なドキドキが胸を支配する。
それでも、息を殺して、胸の前で両手をギュッと握り締めてそれに耐える。
……怖くて仕方なかった。
偵察なんてさせる教頭が……。