なんだかんだ文句を言いながらも、諒子は義理のお兄ちゃんとそれなりに上手くいってるみたいで、あたしは笑顔で頷く。

弾むようなトーンで話す諒子に、なんだかあたしまで嬉しくなって……でもそんなあたしに、諒子は矛先を変更する。


「……実姫、あたしの兄妹ゲンカに微笑んでる場合じゃないでしょ。

さすがの和馬くんも可哀想じゃない?

告白断っておいて彼氏の振りって……可哀想過ぎるって」

「……だよね」


急に的を得た言葉を言う諒子に、あたしはパタンと机に突っ伏した。




――キーンコーン……


1時間目開始のチャイムと一緒に、あたしの深いため息が教室に落ちた。



和馬の気持ちを知らなかったからこそ頼めた恋人の振りは、今となってはもう無理だった。

聞けば、和馬はきっと大丈夫って笑う。

俺は大丈夫だから続けよう、って……無理して笑う。


和馬の度を超えた優しさとか、お人よしな性格は、あたしが一番よく知ってるから。


困ってる人がいれば、自分が犠牲になってでも助けようとする。

いじめなんか見かけたら、相手が何人でも庇い(かばい)に入る。

サッカー部で、練習についてこられない部員のために、一緒に残って練習する。


和馬は……本当にいい奴だから。

だから、余計に胸が痛む。


ずっと気付けなかった和馬の気持ちが……

純粋な和馬の気持ちが……胸を締め付けて離そうとしない。