あたしと先生の関係がいけない事だって、分かってたのに……。


先週の教頭の言葉はどうしても許せなかった。


先生の、職員室の居場所をなくした教頭が、

先生の事を頭ごなしに否定する教頭が、


『施設』

先生の心のキズに、無神経に触れる教頭が……、

どうしても、許せなかった。



「でも最近メガネ男子はやってるしね」

「メガネ男子ねぇ……アキバ系ってやつ?

俺、メイド喫茶とかって、行く奴の気が知れねぇんだよなー。

金払ってまであんなじゃんけんしたいか?」

「分かってねぇなー、矢野セン! あれはただのじゃんけんじゃなくて……」


先生が呆れて笑いながら言った言葉に、一部の男子のメイド喫茶講座が始まって、そこからは授業にならなかった。


先生のインテリっぽい眼鏡を、あたしはぼんやりと眺めていた。



 ※※※



「実姫彼って好きな子いじめたくなるタイプ?」

「いじめって……」


昼休み、買ってきたパンを頬張りながら、あたしは頬を赤くした。


『実姫彼』

学校では出せない名前を隠した先生のあだ名は……、なんだかそのままでちょっと恥ずかしい。

諒子なりの気遣いなのは分かるけど、多分、半分くらいは面白がって呼んでると思う。


先週散々話題になったキスマークが薄くなったのを見て、諒子がニヤニヤと笑う。