「……ごめんな」

「……何が?」


漏らした言葉に、市川が不思議そうに聞き返す。

戸惑いながらも、俺の手の上に自分の手を重ねる市川に、俺は微笑んで見せる。


「……夕飯待たせて」


俺の腕の中で、市川が笑った。




教頭の言う通り、俺は教師として失格だ。


自分のために、真剣な清水を誤魔化した。

あんな真剣な目をした清水に……嘘をついた。



こんな関係、許される訳がないのに……止められない。

市川を、離せない。


先にある不安よりも

今ある感情が勝って……。


その感情が、俺を支配する。


『好き』だとか

『傍にいたい』だとか……。


そんな幼稚な感情が、俺を独占して……市川を縛りつける。

狂気的にさえ思えるほどの、強い至情。




止められない、自分。



市川、ごめん。


最低な恋人で、ごめんな。







……―――でも、離したくないんだ。