「……教師が生徒に手出すとか……、やばいんじゃねぇの?

俺がバラしたら……矢野セン、クビだって分かってる?」


正義感の強いハズの清水から、そんな意外な言葉が出て。

俺は、逸らされた視線の意味を知る。


清水の心の葛藤が見えるようで。

申し訳ない気持ちになりながら口を開いた。


「……それは困るな。

事実だかどうだかも分からない事を言い広められたせいで、市川まで処分される事になったら……困る」

「……」


俺の言葉に、清水が表情を曇らせる。

いつの間にか、空は紫色に染まっていた。


すっかり夜へと姿を変えようとしている空を見上げながら、何も言わない清水に言う。


「もし、清水が勘ぐってる事が正しかったとしても……あ、万が一な。

万が一、正しかったとしても。

俺はこんなことで白状するほど往生際よくねぇよ。

大切なモノを手放す事になるような事、自分からは言えない。……絶対に」

「……」