「和馬? ……どうかした?」

「あ……、ごめん。ぼーっとしてた」


小さく身体を竦ませた和馬はすぐに笑顔を作って、でも、真面目な表情をあたしに向けた。


「あのさ……言うべきかどうか悩んでたんだけど……一応言っておく。

……田宮の事なんだけど」


突然出た啓太の名前に……あたしは肩を揺らす。

それに気付いた和馬は心配そうに表情を歪めてあたしを見ていて。

あたしは和馬の視線から逃れるように目を伏せた笑顔を作った。


「うん。なに?」


明るい声を出しながらも、鼓動が騒ぎ始めていた。

啓太の怒った顔や、冷めた表情ばかりが頭を過ぎって、自然と呼吸が速くなる。


「田宮さ、高校入学してすぐに怪我したらしい。で、しばらくバスケが出来なくなって……それで荒れてたらしいんだ。

俺もサッカー命ってくらい好きだから、バスケ一筋できた田宮が仲間に置いて行かれるのが怖かったのはよく分かる。

もちろん、だからって実姫にあんな事する理由にはならないけど……」


先生が気を使ってか、あたし達から少し離れた場所に座る。

そんな先生を少し気にかけながらも、あたしは和馬を見つめた。


表情を曇らせた和馬が、視線を落としたまま話を続ける。