「けじめ、とか言ってなかったっけ……?」
「あー……言った事あったな。『教師としてのけじめ』って。
……でも、今はただの『男』だし」
そう言って口の端を上げて笑う先生に、またしても胸が音を上げそうになる。
こんなのがバレたら絶対にからかわれるから、平然を装いたいけど……自分の部屋の中に先生がいる事への違和感は拭い去れない。
CGみたいで変な感じ。
「結構きれいにしてるんだな」
「……だって、先生がきれいに使えって言ったんじゃん」
意外そうに言った先生に苦笑いを浮かべると、先生は「そうだっけ?」なんてとぼけながら小さく笑う。
そんな先生を見つめていると、不意に目が合って……先生の表情が真剣なものに変わった。
「……ちょっと話があるんだ」
真面目な顔をした先生の口から出た言葉に、戸惑いながら頷いた。
先生は床にあぐらをかいて座って、あたしも向かい合うように腰を下ろす。
どうしていいのか分からなくて、結局正座を崩した形に収まった。
視線を上げると、先生があたしを見つめていて……恥ずかしくなりながらも、なんとか視線を返す。
「俺、告白なんかしちゃったけど……普通に考えてみると、それ、結構まずいんだよな」
「……うん」
「生徒と付き合うとか……絶対にまずいし、正直、お互いにとって付き合うのがベストかってのもよく分かんねぇし」
「……うん」
先生があまりに言い難そうに口を開いたせいで、あたしの頭には『別れ』の文字が浮かんでいた。
それでも何とか相槌だけは打って、膝の上に置いた手を握り締めて、先生の言葉の続きを待つ。



