『先生と両想いになった』

ただそれだけの事なのに……

自分でも受け入れられていない出来事は、うまく言葉にできない。


諒子に伝えるのが、やっとだった。



先生の唇の感触も

背中に回された腕も

低く甘い告白も

胸を締め付ける匂いも


昨日の先生との事は、全部鮮明に思い出せるのに……それでも夢にしか思えなかった。


嬉しすぎて、

あんな事が自分に起こったなんて信じられなくて……

何度も先生がキスした唇に触れた。



先生のキスの残る唇に―――……


「……~~っ」

「……何赤くなってんのー? 昨日の事考えてたんでしょ? ノロケとか勘弁してよね」


ニヤニヤしながら覗き込んでくる諒子に何も言い返せなくて、赤い顔を両手で挟んだ。


「別にあたしの前でならいいけど、間違っても和馬くんの前でそんな顔しないでよ?

絶対大変な事になるの間違いなしだから」

「……」


教室までの帰り道、なるべく顔の赤みを取ろうとあたしは何度も心呼吸を繰り返した。



昼休みを後15分残して教室に戻ると、椅子に座ったと同時くらいに、後ろのドアから和馬が顔を覗かせた。