【実姫SIDE】


「ええええっ……!!」


予想通りの諒子の大声に、あたしは諒子の口を塞いだ。

口を塞がれた諒子が、無言でコクコクと頷くのを確認してから、ゆっくりと手を離す。


いくら誰もいない階段脇で話をしてるとはいえ、学校の中で口に出されるのは絶対にまずい。

しかもあんな大声で。

誰もいなそうな中校舎の一番端の階段を選んだせいで、あたし達の声はよけいに響いていた。


そんなまずい話なら、放課後あたしの部屋に来てもらえばいいんだけど……。

嬉しすぎて実感の湧かない話を、すぐにでも諒子に聞いて欲しくて我慢できなかった。


諒子は少しの間黙って……そして、微かに笑みを浮かべながらあたしを見た。


「それ……本当だよね?」

「……うん。……ちょっ、危ないって!」


頷いた途端抱きついてきた諒子に、バランスを崩して床に座り込む。

それでも抱きついたままの諒子に首を傾げた時、弾んだ声が聞こえた。


「よかったね! ……本当によかったぁ……」


心から安堵したような諒子の言葉が、胸に響く。

胸を響かせた言葉が涙まで浮かび上がらせてきて、それをぐっと耐える。


「実姫いっつも変な相手ばっか好きになるから、本気で心配してたんだからね?

芸能人とかでも、胡散臭いような男ばっかりかっこいいとか言うし。

絶対ホストにいいように騙されて貢ぐタイプだなーって、本気で心配でさー」

「……」

「まぁ、矢野センも見た目ホストだけど。……貢ぐなよ?」


諒子のありがたい心配と余計なお世話に、苦笑いを零す。

感動しそうだった気持ちも、諒子の言葉が笑顔に変えてくれた。