「どうしよう……」


翌日、あたしは部屋から出られずにドアの前を行ったり来たりを繰り返していた。


……―――昨日。

あれから先生はすぐに校庭に戻った。


『少し落ち着いてから来い。そんないかにも泣いてたような顔してたら、またあいつが煩いだろ』

先生の指した「あいつ」が和馬だって事にすぐに気付いたあたしは、苦笑いを浮かべた。


そして、先生に言われた通り、気を落ち着かせて顔を洗ってから校庭に戻った。

手ぶらで帰ったせいで諒子に怒られて。

結局バドミントンも決勝で負けた。


諒子の機嫌はおごらされたウーロン茶で収まって、その後は色んな球技を見て回って……夕方17時、寮に戻った。


先生の帰りを落ち着かないで待ったりもしてたけど、職員は打ち上げがあったらしくて先生が戻ったのは深夜で。

先生が立てる物音に耳を澄ませていたら、いつの間にか寝てた。



……―――そして、今に至る。


部屋から出られない理由はただ一つ。

昨日の事が、頭から離れないのが原因。


っていうよりは……あれは嘘だったんじゃないかって不安で……。

それに、どんな顔をすればいいのか、よく分からないし。


不安ばかりが支配する頭に、床に向かってため息をつく。


嘘、じゃないよね……?

……うん。違う。


だって……

こんな幸せなドキドキは、久しぶりだもん。


この「恋」のドキドキが、嘘なわけない―――……。