「でも、もう限界。

いい加減、疲れた」


そう言い切った先生は、今までの優しい瞳を一転させて、真剣な表情を浮かべた。

あまり見慣れない真面目な顔に、ドクンと胸が脈打つのが分かった。



「市川が好きだ。

誰かと間違えてるとか……ふざけんな。間違う訳ねぇし」

「―――……」


先生の言葉が頭の中を巡って、あたしの身体の中心にストンと落ちる。

やっと先生の言葉を信じられたあたしの目からは急に涙が溢れ出して……頬を伝って床に落ちた。


そんなあたしを、先生は何も言わずに抱き寄せてくれて。

でも、黒いTシャツに染み込む涙に苦笑いを零した。


「市川……なんか冷たいんだけど。Tシャツびしょびしょじゃねぇ?」

「だって……、止まんないんだもん……っ。

いいよ、離して……先生の服汚しちゃう……」

「しょうがねぇな。……別にTシャツなんかどうでもいっか。

元々砂とか汗で汚れてたし。今さらおまえの涙ぐらい、どうって事ねぇか」

「汚い、よ……」

「おまえが言うな」


心にもない不満を口にすると、先生は笑いながらあたしの頭を抱き締めた。


先生の言葉に

腕の強さに

優しさに……また涙が伝った。