「……あいつバカだな。
そんな武道の達人なんかそうそういねぇのにな」
「え……嘘だったの?」
ほっとしたように笑う先生に、あたしは振り向かないまま聞く。
色んな感情が混ざって……先生の顔を、見られなかった。
「嘘に決まってんだろ。俺、野球少年だったし、痛いのとか嫌いだし。
……手、大丈夫か?」
前に回り込んで、あたしの手を取った先生に、身体が小さく竦む。
突然触れられた手に緊張を示すと、先生はそんなあたしに気付いて言葉を掛けた。
「……俺、今日救護係だから。今もちょっとタオル取りに来ただけだし」
この場所に居合わせた事を弁解するような先生の言葉に、胸が鈍く痛む。
『救護』
『これに教師以上の感情はない』
まるでそう言っているような先生の言葉に、唇を噛み締める。
『教師』の先生が悲しくて
伝えられない想いが悔しくて
未だに期待なんかしてる自分が情けなくて……。
あたしは、涙の浮かんできた目で先生を見上げた。
あたしの手を見ていた先生が、あたしの視線に気付いて顔を上げる。
先生と視線がぶつかって……、その瞳をじっと見つめてから、口を開いた。
「……もう、優しくしないで」
『生徒』としてしか見てもらえないなら
『教師』としての感情しかないなら
優しくされたって、つらいだけだから。
やっぱり……
生徒じゃ、いや――――……



