寮は、校舎を挟んでグランドとは反対にあるから、寮の階段を上り始めた時には、グランドの生徒達の声はほとんど聞こえなかった。
やけに沈んでしまった気持ちにため息をつきながら階段を上がった時。
ドアの前に立つ、啓太の姿が視界に入った。
「……―――」
頭が真っ白になって息を呑んだあたしに、啓太が気付いて笑顔を向けた。
「実姫、丁度よかった。いつまで待てばいいんかと思った。
つぅかおまえケータイ出ろよな」
「……」
何事もなかったように話しかけてくる啓太に、言葉が出ない。
そんなあたしに気遣う様子もなく、啓太が続けた。
「こいつ、紹介したくて」
あまりの出来事に、啓太しか映ってなかったあたしの目に、もう1人、男が飛び込んできた。
明るい茶髪に両耳に派手なピアス。
着崩した制服。
啓太と同じくらい荒れた外見は、威圧感を感じさせて……少し後ずさった。
「俺、孝治。啓太に実姫ちゃんのプリクラ見せてもらって気に入ちゃってさ。
啓太とはもう別れたって言うし、俺と付き合ってよ」
あまりに突然な話に、視線を啓太に戻す。
「……なに?」
「別にいいだろ? おまえ何しても怒んねぇし。その事話したら余計気に入ったみたいでさ」
「……っ」
表情を歪めながらした問い掛けに、啓太は笑いながらそんな言葉を発して……。
そんな啓太に、抑えたハズの怒りがどんどん溢れてくるのが分かった。
溢れ出した感情が頭まで登って、小さく震える身体を啓太へと進める。



