先生のいるドッチボールのコートに近づくにつれて、聞こえていた黄色い声援が大きさを増した。

先生は、いつか見た白いラインの入った濃紺のジャージに黒いTシャツを着ていて……

いつものスーツ姿とは違う先生に、ギャラリーの女子が騒いでいた。


「やっぱ矢野センかっこいい!!」

「あの身長と顔はレベル高いよねー……」

「告白されても全部断ってるらしいけど……ダメ元で言っちゃおうかなぁ」

「言っとけば……って、あんた彼氏いんじゃん」



少し離れたところから先生を見ていると、近くにいる女子の間から、色々な声が聞こえてくる。

あまり聞きたくないのに……。


耳が勝手に先生の名前を拾い上げる。


「あ、そういえばね! 先週矢野センにパンもらったんだー」

「え、嘘!! なに? 脈あり?!」



「……―――っ」


たくさん飛び交う会話の中から、偶然にもそんな言葉を拾ってしまって……あたしは思わず俯いた。




『期待しない』

その意味を……

あたしはちゃんと理解できてなかったのかな……。



他の子にも優しいのは、当たり前なのに。

あたしだけ、なんて事ないのを分かってたのに……。



……なのに、なんでショックなんだろう。


なんで、こんな裏切られたような気持ちになるんだろう……。



先生は、

何も悪くないのに―――……