その日は、全学年合同で球技大会が行われた。


校長はこの間の騒ぎ以来、いつも通りのあっさりとした挨拶をするようになった。


「ベストをつくして、怪我のないように」


そんなシンプルな言葉を合図に、球技大会が始まる。


一番最初に体育館で行われるバトミントンの試合に、あたしは諒子と出場していた。

中学時代3年間をバトミントン部で過ごした諒子の活躍で、順調に勝ち上がって、3勝したところで決勝進出が決まった。


バトミントンにバスケ、ソフトにバレー、そして卓球にドッチボール……

とにかく種目数が多いため、時間に追われるようにプログラムが進んでいく。


あたし達が試合を行っていたコートも、もうバレーボールのコートへと変身を遂げていた。


「慌ただしすぎだしね。2日に分ければいいのに」

「っていうかまだ午前中なんだね。決勝は14時からだし……時間あるね。何見に行く?」


ハンドタオルをパタパタさせて風を作りながら諒子に聞く。

7月の体育館は窓を全開にしても蒸し返っていて、じめっとした空気が肌に纏わりついて気持ちが悪い。

中途半端なサウナ状態に、審判でさえ額に汗を浮かべていた。


ジャージを膝までめくり上げても、袖を肩まで上げても追い付かない暑さは、苛立ちすら誘ってくる。


「何見るって、そんなの決まってんじゃん!」


この暑い中肩を組んできた諒子に、首を傾げる。

そんなあたしに何も答えないまま、諒子の視線は校庭へと向けられていて……。


「えーっと……あ、いたいた。

ドッチボール行くよ。あの茶髪の長身は目立つからすぐ見つけられていいねー」


諒子の視線の先を追うと、男子生徒に混ざってドッチボールをする先生がいて。

あたしは膨れて諒子を見た。