「……放っとくから大丈夫だよ。

もう、絶対に会いに行ったりしないから」


あたしが作った笑顔を少し見つめてから、先生は目を伏せる。


「そうだな。……俺が代わりに出たってしょうがねぇしな。

放っとくのが一番だな」

「うん」

「……なんかあったら言えよ。

俺、教師だし、困ってる生徒を放っとく訳にはいかねぇし」

「……うん」


先生の優しくもつらい言葉に、きゅっと唇を結びながら頷いた。

強調されたような『教師』って言葉が、すごく耳についてしまって……苦しかった。


「……市川」


席を立って食堂を後にしようとした先生に呼ばれて、椅子に座ったまま先生に向き直る。

振り返った先生の顔が、優しく、でも何かを我慢するように困り顔で微笑んでいた。


「……なに?」

「なんかあったら……なるべく俺に言えよ?

あー……ほら、他の先生にあいつとの事情とか知られたくないんだろ? だから……」


最後は少し慌てたような素振りを見せた先生に、あたしは微笑む。


「うん……ありがと、先生」


先生はそんなあたしから、目を逸らして食堂を後にした。