照らす先で、市川が赤い椅子に上がる。

目に見えてガタガタと揺れる椅子が不安定もいいところで……。

それに加えて市川の危なっかしい手つきが、俺の不安を仰ぐ。


市川が交換した蛍光灯を持って、無事椅子から下りたところで、俺はようやく胸を撫で下ろして長いため息をついた。


「……先生、神経質のうえ心配性? 疲れちゃいそう」

「……」


からかうように言った市川に言葉が出なかったのは、今までそんな事を言われた事がなかったからだった。

神経質だって事は自分でもよく分かってたし、学生の頃から周りにも言われてた。


でも……

心配性だなんて言われたのは初めてで。

聞き入れるには戸惑いがあった。


自分の生い立ちが原因なのか、普段から他人に干渉しないように過ごしてきた。

どちらかと言えば、冷たいとかクールだとか、そんな風に言われる事が多くて……だから、市川の言葉に驚いた。


「心配性……」

「違う? だって、……啓太との事も結構心配してくれてたし、和馬の事だって変な心配してたし。

前、体育の授業の時も生理痛心配してくれたし、それに今だって……」


市川の言葉に、その光景が脳裏に浮かぶ。

言われて思い返してみれば、彼氏の問題も、清水が遅くまで部屋に上がってた時も、体育の授業中も……。

もっと言えば、市川が何か薬を飲んでると必ず体調を聞いたり、帰りが遅くて注意した事もあった。