握り締めた手の中の飴。

そっと手を開いてそれを眺めるあたしを、和馬が不思議そうに覗き込んできた。


「飴?」


和馬の言葉に、あたしは小さく首を振って笑顔を向ける。


「ううん……薬?

でも、必要ないけどね」

「薬? でもそれ、どう見ても飴……」

「ほら、早く行こ! 遅れちゃうよ!」


納得いかなそうな和馬の言葉を遮って、笑いかける。



飴は、舐めない。

『忘れ薬』なんて、いらない。


片思いでいいから。

だから、この気持ちは……、捨てない。


一緒に、連れて行く。



気付きたくなかったけど

行き場のない想いだけど。


だけど、それでもいい。




生徒としてなら、先生の傍にいられるんだから。

それで、いい―――……。