『嫌われたら……どうしたらいいの?』


冷めて見せていた瞳は、本当は感情深くて泣き虫で。

ドライに見せていた態度は、恐がりを隠す為。


『あたしがこんなだからいけないのに……』


いつも……いつも、何かを恐がりながら、それでも必死に強がって。

そんな市川が、痛いくらいに健気で……。


張り詰めてるモノが切れたら、壊れるんじゃないかってほど儚く見えて、

いつも胸が軋むように鈍く痛んだ。



二度抱き締めた身体は、やっぱり小さくて……守ってやりたいと思った。


寂しさからも、他の傷つけるものからも……、本当は、守ってやりたい。

俺が、この手で―――……



「……今日の学校での事、忘れろ」


心とは裏腹な言葉に、市川が俯かせていた顔を上げる。

少し赤く染まった頬に、動揺のせいか潤んで揺れる瞳。


きつく閉じられていた唇が、何かを言おうとしてる事に気付いて、市川から目を逸らす。


「キスした事……?」

「……ああ」


震えた声が、俺の脳内に甘く切なく響く。

夕食後の2人きりの寮は静かで、何の音も聞こえなかった。

微かに聞こえるのは、パソコンの機動している機械音だけ。


小さなモーター音を作り出すパソコンの向こうで、市川が再び口を開いた。


「なんでキスしたの……?」


予想していたなかった言葉に……俺は声を詰まらせた。


なんで……、

なんて、そんなの―――……