大体……あいつがあんな顔して見上げてくるからだろ。

確かに抱き寄せたのは俺だけど、でもキスは……。


そんな言い訳を心の中で漏らしながら、また大きなため息をつく。

賑やかさを取り戻した廊下に、重たいため息が吸い込まれていく。



別に……、好きならそれでいい。

黙ってればいいだけの話。


……でも。


さっきのキスが頭に浮かんで、眉を潜めた。


……気付いたよな?

多分、俺の気持ちに、アレで気付いたよな……。

どうにかしねぇと……。



言っちゃいけない気持ちな事くらい、分かってたのに。

伝えちゃまずい気持ちだって、分かってたのに。


気付いちゃいけない想いだったのに―――……。




南校舎へ続く渡り廊下に差し掛かった時、チャイムが響いた。

屋根のない渡り廊下を、夏が近づいた勢いのある太陽が照らす。


眩しさからなのか、それとも後ろめたさからなのか。


静かにその光から目を逸らした。