あたし……、

なんで生徒なんだろう……。


なんで、先生なんだろう……






なんで、

好きになっちゃったんだろう―――……



気付いた気持は、

もう、消せないよ―――……






諦めるために啓太との事を言ったのに。

あたしはなんてバカなんだろう。


啓太と別れた事を褒めてくれた矢野の笑顔を見て、余計に好きになった。




頭を撫でてくれた矢野の手に、触れたいと思った。


そんな事を思っても仕方ないのに。

想いを伝える事さえ出来ない相手なのに……。



握りしめようとして、手の中にあるガムに気付いて……あたしはそれを口に入れた。




いつもなら甘さでいっぱいになる口の中に、すっきりとしたキシリトールが広がる。




「……甘くない」


ぽつりと零した言葉が、静かに床に落ちた。