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「うわー……購買すごい」


諒子とパンを買いに行くと、いつもの倍くらいの生徒が購買に群がっていた。

そんな中に飛び込んでまで買うのは面倒くさくて、あたしは諒子に提案を持ち掛ける。


「……じゃんけんにしよっか」

「……賛成。負けた方って事で」


あたし同様、人だかりにうんざりしている諒子が苦笑いと一緒に頷く。

そして。


「じゃああたし渡り廊下で待ってるね」


そう言って手を振ったあたしに、諒子が恨めしそうな視線を向けてから購買へと足を進めた。


中校舎と南校舎を繋ぐ2階の渡り廊下は、人通りが少ない。

お昼休みのこの時間に、移動教室ばかりが集まる中校舎へと続く渡り廊下を使う生徒はほぼいない。


遠くから聞こえてくる生徒の笑い声を聞きながらぶらぶらしていると……遠くの笑い声とは違うトーンの声が混ざった。


「矢野先生っ」


その名前に……、あたしは、声のした方に足を向ける。

なんとなく足音を殺しながら中校舎の階段をそーっと覗くと……

1人の女子生徒と、矢野の姿があった。


矢野の姿に、あたしの身体が小さく竦んで、心臓が勝手に刻むテンポを上げる。

そんな胸を押さえながら、2人の会話に耳を澄ませた。


「……なに?」


少しだけ頬を蒸気させた女子生徒に、矢野が小さく笑顔を作って返事をする。