――ガラッ


突然、さっき閉めた窓が開いて、あたしと諒子がその音に顔をあげる。


「おまえ今のどういう態度?」


視線の先には……苦笑いをする矢野の姿があって。

あたしは思いっきり上げてしまった顔を、勢いよく俯かせる。


「反抗期かよ。ったく……ちゃんと勉強しろよ?」


矢野はそう言うと、不意にあたしの頭を小突いて窓から姿を消した。


「うわっ……実姫、顔真っ赤」


俯いたままのあたしの顔を覗き込んで、諒子が驚いた表情を浮かべる。


「……そんなに赤い?」

「だから真っ赤だって。何? 矢野センと何かあったの?」

「ないっ!!」


勢いよく顔を上げて否定したあたしを見て、諒子がにっと口の端を上げる。

その顔にしまったと思いながらも……時、既に遅し。


「怪しいなー。絶対何かあったでしょー? 何? 言えないような事があったの?」

「……」


楽しそうにからかってくる諒子に、口を尖らせる。

矢野が開けっ放しにした廊下の窓からは、煩い男子の声が聞こえてくる。

そんな男子の姿を少し瞳に映した後……ぼそぼそと話し出す。


「昨日……転びそうになったとこを矢野の助けられて……。

なんかそれからドキドキ、しちゃって……。

なんとなく矢野の顔が見られないだけ……」


それを聞いた諒子は、驚いた表情のまま固まっていて……。

そしてゴクリと喉を鳴らしてからようやく口を開いた。


「実姫……DV彼氏の次は教師って……。

もう身体が禁断的な恋にしか反応しなくなってるんじゃない……?

ヤバイって……」

「だからっ、違うの!!

だって……矢野、彼女いるじゃん! それに第一先生だし!

ありえないって……なに?」


必死に抵抗している最中、鞄の中をごそごそいじっていた諒子が、取り出した手鏡をあたしに向ける。

鏡の中に映された自分の顔が……赤く蒸気して、困った表情を浮かべいてた。