「だから、和馬はただの幼なじみだってば」

「……おまえ、本気で気付いてねぇの?」


訳の分からない事を言う矢野に、顔をしかめながら階段を上り終わった時―――……。

最後の一段に足が引っかかって、体勢が前のめりに崩れた。


「……―――っ」

「……っぶねぇな」


床に一目散だったあたしを支えたのは……矢野の腕だった。

細いくせに力強い腕があたしを抱き止めていて……。


「気をつけろよな」


びっくりしてドキドキしながらも、聞こえてきた注意に矢野を見上げる。

思ったよりもずっと近くにある矢野の目に、捕えられた瞬間。


……―――ドクン。


至近距離にある矢野の顔に

抱きとめたままの状態でいる腕に

流れ込んでくる香りに……


胸が高鳴った。



じっと矢野と視線を交わらせたまま停止するあたしに、矢野が首を傾げる。