「……そうだな。これでもガキの頃は信じてて……いい子にしてれば迎えにくるんだって頑張ってたりもしたけど。

けど、どんな頑張っても迎えになんか来ないって分かって……。

迎えに来ないって分かってからは、嘘つかれる事に敏感になったりして、塞ぎこんでる時期もあった。

今でも嘘は嫌いだし。

だから、おまえみたいに嘘つかれても何されても彼氏を信じようとするのはすげぇって思ってるよ。

……間違っちゃいるけどな」


伏し目がちに笑った矢野に、あたしは少しだけ微笑んだ。


古いテレビがつまらないバラエティー番組を映し出していた。

後から入れたような不自然な笑い声が、2人きりの食堂に寂しく響く。