「週番~」
昼休み、クラスの子の呼びかけに、あたしは軽く手を上げて返事をする。
「はーい、何ー?」
「これ、昨日の課題なんだけど集まったから持ってってもらっていい?」
男子と女子、出席番号順に交互に当番を回していて、今週が2年にあがって初めての周番。
あたしの出席番号は3番だから、つまり1学期が始まって今週が6週目。
「うん」
「数学学習室ね」
付け足された言葉に顔を歪ませながらプリントを受け取った。
いつも寮で会ってるだけに、学校で会うのってなんとなく気まずい。
だけど矢野はそんな事思ってないみたいで。
飄々(ひょうひょう)としてる態度が少し癪に障る。
完全に一人の生徒として接してくる矢野が、本当に教師みたいで気に入らない。
……本当の教師なんだけど。
「いってらっしゃーい」
明るい諒子の言葉に送り出されて、中校舎3階にある数学学習室に向かう。
30枚ほどのプリントを持ちながら渡り廊下を渡った時、気持ちいい風が髪を撫でた。
3階の渡り廊下は吹き抜けで天井も壁もないせいか、小さな屋上みたいな雰囲気を出す。
雨の日は閉鎖されてて不便だけど、晴れた日はたまり場として人気があった。
穏やかな風にしばらく足を止めていたあたしだったけど、その風に手の中のプリントが暴れ出して、再び足を進めた。