翌日、部屋で雑誌を読んでいると母の甲高い声が聞こえてきた。

 時計を見るとまだ午後2時で、歩が来るにはまだ早い。

 来たのが誰だか予想がついたところで、体に力が入ったのがわかった。

「よっ」

 やっぱり、来たのはわた兄だった。

 会わないようにしなきゃと思った矢先だったのに。

 わた兄は何事もなかったかのように笑顔でテーブルの脇に座った。

「どうしたの?」

「恵里が暇してると思って」

 確かに、暇ですけど。

「それと、歩が来る前に口説こうと思って」

 爽やかな笑みでサラッと言ってのけないでいただきたい。

「何言ってんのよ。あたしは歩が好きなの」

「じゃあ俺のことは嫌い?」

「嫌いじゃないけど……」

「それじゃまだ望みがある」

 そんな言い方ずるい。

 弟共々西山兄弟は揃ってずる賢いらしい。