歩の部屋に戻った私は、精一杯演技をした。

「楽しかったよ、ドライブ」

 歩は笑顔を見せないままただ私にしがみつき、まるで消毒とでも言わんばかりにキスをしてきた。

 そして、

「あいつに何かされなかった?」

 なんて聞いてくるから心が痛んだ。

「まさか」

 抱きしめられて付き合おうって言われて、更にチューされました。

 なんて正直に言えるわけがない。

 暫くわた兄とは会わないようにしなきゃ。

「明日学校終わったらすぐに恵里のとこ行く」

 大好きな低くて甘い声。

 切ない顔がおまけに付いてきて、胸からなんともいえない愛しさが全身に広がった。

 私はやっぱり歩が好きなんだと実感した。

「うん。待ってるね」