大人しかった歩と違い、昔から彼は明るい性格だった。

 小学校時代はみんなのリーダー格で、それはそれはみんなに親しまれていた。

「なんかショックだな。大事な妹を取られた気分だよ」

 歩きながらタバコに火をつける姿がまた絵になる。

 彼が言うように、私はずっと妹のように可愛がってもらっていたのだ。

 まあ、私は恋していたわけだけど。

「そんなこと言わないで。将来歩がもらってくれたら、ほんとの妹になれるんだから」

 そっか、と笑いながら煙を吐くわた兄。

 いくつになっても、大人だなぁと感じさせられる。

 幼稚園の頃も、小学生の頃も、中学生の頃も。

 わた兄はずっと私の憧れで、彼に似合う女になりたいと思っていた。

 私や歩が高校に入学すると同時に東京の大学へ進学して、会わない間に気持ちは消えていったっけ。

「じゃ、またね。わた兄」

「おう」

 手を振って家に入ると、夏のせいか顔が熱くなっていた。