気付いているのかいないのか、歩はキャンパスの様子を眺めている。

 ちょっとだけ大学に嫉妬心が生まれて、私は歩の肩に頭を乗せた。

「ねえ、歩」

「なに?」

「あたし、応援するよ。受験」

「は? 今までは応援してくれてなかったの?」

 クスッと笑ったのに合わせて、歩の肩が揺れた。

「そうじゃなくて、これから勉強で忙しくても、あんまり邪魔はしないようにする」

「邪魔ってなんだよ」

「毎日部屋に押しかけたりとか」

 少し寂しくても、我慢しなきゃ。

 受験が終わってから、めいっぱい一緒にいればいい。

「邪魔だなんて思ったことないけど」

「でも、気になっちゃうでしょ? 多少は」

「まあ、自分の女が部屋にいるわけだからな。ついつい手は出ちゃうけど」

「もう、そういう意味じゃないもん」

 再び笑いに合わせて肩が揺れた。