食堂の建物から出ると、キャンパスも学生で溢れかえっていた。

 木陰のベンチに落ち着くと、ここからは建物や人の流れがよく見える。

 歩はんーっと伸びをした。

「ここが俺の行きたい大学」

 風景を眺めながら呟く。

 私はその横顔を眺めた。

「なんかイメージと違う。こんなにゆったりしてるとは思わなかった」

「はは、大学なんてみんなこんなもんだよ」

 高校は制服だし、制服なんて大体暗い色。

 私は人の群れを見て、大学はカラフルだと思った。

 ここは髪の毛の色、服、バッグ……何にも縛られない自由な空間。

 今の歩のビリビリした生活の行き着く先は、このゆったりした大学なんだ……。

「家からは遠いね。でも、あたしがMTビルで働くなら一緒に通えるじゃん」

「そうだな。まずは合格しないと始まらないけど」

「あ、そっか」

 私のメッセージ、届いたかな?

 一緒に通えるじゃんって、言ったの。

 それは、高校を卒業してもずっと一緒にいたいっていう意味なんだよ――。