「しかも、器用」

 歩の視線は髪の方に行っていた。

「そう? 北高で学んだのよ」

 と言うと、クスッと笑って左腕のひじを差し出してきた。

 ドキッとした。

「ほら」

「うん」

 出されたひじの間に私の腕を通す。

 やだ、ますます恋人同士って感じがする。

 今までが今までだっただけに、むず痒い。

「ねえ、歩」

「ん?」

「ちょっとドキドキする」

「言うなよ。俺だって同じなんだから」

 そして、二人で爆笑。

 でも腕は絶対に放さなかった。

 バスと電車を乗り継いで、やっとたどり着いたのはK市。

 地元の街と違って、人がうじゃうじゃいる。

 視界の中には人の頭ばっかりだ。

 私は視線を少し上に向けて、駅を出てすぐに見える建物を見つめた。

 卒業してからやりたいことが、そこにあるのだ。