そして来る土曜日。
アップにしてふわっと散らした髪をスプレーで固めている時、母の甲高い声が聞こえた。
歩のお迎えだ。
もう一度だけ鏡で自分を確認して、香水を半プッシュ。
よし、出陣。
勢いよく部屋を飛び出した。
「おっす」
母の前だからか、爽やかに笑っている歩。
いつもみたいにTシャツとジーパン姿。
シンプルなのに、それが大人びて見えるのはなぜだろう。
「じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
母に見送られながら、出発。
家を出ると、歩はまず私に言った。
「お前、細いな」
今更? なんて思ったが、いつかの彼の言葉とかぶるので、やめた。
細めのTシャツに、デニムのショートパンツ。
いつも脚はルーズソックスやスウェットで隠れているからそう感じるのかもしれない。



