「あ、恵里」

 ケーキをつつきながら、歩は思い出したように私を呼んだ。

「次の土曜日、付き合ってほしいとこがあるんだけど」

「え? あんた、学校は?」

 通常ならこんな質問もおかしいが。

 なにせ明日からの夏休みでさえ学校に通い、土日にも登校する部族。

 休みがあるなんていう考えに至らなかった。

「今月の模試は全部終わったよ。だから、たまには二人で出かけようぜ」

 私は固まってしまった。

「なんでそこで黙るんだよ」

「だって、それってなんか……」

「なんか? 何?」

「デートじゃん」

 自分で言っておいて顔が赤くなるのを感じた。

 そんな恋人同士らしいこと、しちゃっていいの?

 という気持ちになる。

「何か問題でも?」

「い、いえ」

 どうしよう。

 嬉しいけど、こっぱずかしい。