窓に影2


「入るときはノックぐらいしてよ。俺たち付き合ってんの。空気読んでくれる?」

 カナママの前では息子というか少年らしい顔をする歩。

 こういう顔を見ると、大人ぶっている歩も西山家の末っ子という感じがする。

「空気読んだから入ってきたのよ。恵里ちゃん、大笑いしてるんだもん」

 そう言ってテーブルに何かを乗せた。

 チーズケーキだ。

 なんかこれ、すごく見覚えがある……。

「カナママ、これって……」

「そうよ、マコちゃんが作って持ってきてくれたの」

 マコちゃん、うちの母だ。

「空気読んであたしは出て行くから、二人で食べなさいな」

「はーい」

 二人でケーキをつついていると、家庭教師をしていた頃が懐かしくなった。

 先月までやっていたのに、なんだかすごく昔のようだ。

「やっぱおばさんのケーキ、うまいよな」

「それ聞いたら喜ぶよ」

「うん。明日にでもお礼のメールしておくよ」

 こういうのを家族ぐるみのお付き合いというのだろう。