「入るときはノックぐらいしてよ。俺たち付き合ってんの。空気読んでくれる?」
カナママの前では息子というか少年らしい顔をする歩。
こういう顔を見ると、大人ぶっている歩も西山家の末っ子という感じがする。
「空気読んだから入ってきたのよ。恵里ちゃん、大笑いしてるんだもん」
そう言ってテーブルに何かを乗せた。
チーズケーキだ。
なんかこれ、すごく見覚えがある……。
「カナママ、これって……」
「そうよ、マコちゃんが作って持ってきてくれたの」
マコちゃん、うちの母だ。
「空気読んであたしは出て行くから、二人で食べなさいな」
「はーい」
二人でケーキをつついていると、家庭教師をしていた頃が懐かしくなった。
先月までやっていたのに、なんだかすごく昔のようだ。
「やっぱおばさんのケーキ、うまいよな」
「それ聞いたら喜ぶよ」
「うん。明日にでもお礼のメールしておくよ」
こういうのを家族ぐるみのお付き合いというのだろう。



