「秘密」
マンガのページをめくりながらそう答えると、歩はシャーペンをポイッとノートに転がしてこっちにやってきた。
ベッドがググッとしなる。
「何で隠すんだよ?」
「ちょっと、恥ずかしい」
「はぁ? 自分の進路だろ? 答えろっ」
そう言って脇腹をくすぐってくるから、私は大声を上げて笑った。
しばらく攻撃をされていると、部屋のドアがガチャリと開いた。
おかげで歩の手が離れる。
「あんたたち、いつまで経っても子供ねぇ」
歩のお母さんだった。
お盆に何やら乗せてやってきた。
「あはは、だって歩が……」
治まらない笑いで涙目になっている私を、彼女は歩にそっくりの顔で笑った。
歩のお母さんである加奈子さん。
私は昔から彼女をカナママと呼んでいる。
母がカナちゃんと呼ぶから、影響されてるんだと思う。
うちの母と違って細身で、オシャレで、両耳のピアスが昔から印象的だった。



