窓に影2


「秘密」

 マンガのページをめくりながらそう答えると、歩はシャーペンをポイッとノートに転がしてこっちにやってきた。

 ベッドがググッとしなる。

「何で隠すんだよ?」

「ちょっと、恥ずかしい」

「はぁ? 自分の進路だろ? 答えろっ」

 そう言って脇腹をくすぐってくるから、私は大声を上げて笑った。

 しばらく攻撃をされていると、部屋のドアがガチャリと開いた。

 おかげで歩の手が離れる。

「あんたたち、いつまで経っても子供ねぇ」

 歩のお母さんだった。

 お盆に何やら乗せてやってきた。

「あはは、だって歩が……」

 治まらない笑いで涙目になっている私を、彼女は歩にそっくりの顔で笑った。

 歩のお母さんである加奈子さん。

 私は昔から彼女をカナママと呼んでいる。

 母がカナちゃんと呼ぶから、影響されてるんだと思う。

 うちの母と違って細身で、オシャレで、両耳のピアスが昔から印象的だった。