「多くないよ、二桁行ってないし。長持ち派だから」

 長持ち派とは、平均3ヶ月以上続く恋愛をするタイプのこと。

 北高校では、3ヶ月は「長い」と言われるのだ。

「そうなんだ。意外だね」

 ほのかちゃんの返事も、決して失礼にあたるわけではない。

 数をこなすほうが良しとされる我が校独特の風習では、むしろやり手に思われているという尊敬の言葉なのだ。

「彼氏、どこ校なの?」

「南高」

 彼女は少しだけ顔を引きつらせた。

 実は北高と南高は互いに互いをバカにし合っているところがある。

 北高校に言わせると、「南高はガリベンでダサい」。

 南高校に言わせると、「北高はバカで話にならない」。

 勉強ができる南高とオシャレが楽しめる北高の、僻み合いの末に生まれた思想だ。

 ほのかちゃんは私を心配する顔をして言った。

「彼氏と話、合うの?」