左下の影を確認しながら、私は歩に電話をしてみた。
コール音が鳴ると同時に影が動く。
影がなくなった次の瞬間、
「どうした?」
愛しい声が聞こえる。
「勉強中?」
寂しさはできるだけ隠せるように、明るい声を出す。
「ああ、うん。明日も模試だからね。宿題は今のうちにやっとかないと」
「大変だね」
「お前は楽でいいな」
「うるさいな」
相変わらずな会話を交わす。
寂しいと素直に言えない私はやっぱり天邪鬼。
「あたしだってね、そこそこすることはあるのよ」
「ほう、例えば?」
「歩には教えない」
忙しい歩は寂しいなんて思わないのだろうか。



