窓に影2


 左下の影を確認しながら、私は歩に電話をしてみた。

 コール音が鳴ると同時に影が動く。

 影がなくなった次の瞬間、

「どうした?」

 愛しい声が聞こえる。

「勉強中?」

 寂しさはできるだけ隠せるように、明るい声を出す。

「ああ、うん。明日も模試だからね。宿題は今のうちにやっとかないと」

「大変だね」

「お前は楽でいいな」

「うるさいな」

 相変わらずな会話を交わす。

 寂しいと素直に言えない私はやっぱり天邪鬼。

「あたしだってね、そこそこすることはあるのよ」

「ほう、例えば?」

「歩には教えない」

 忙しい歩は寂しいなんて思わないのだろうか。