〈嘘つけ。いつも帰るの8時くらいのくせに〉

 え、バレてるし。

 母がチクったのだろうか。

〈誰に聞いたのよ?〉

 と送信すると、約1分後に電話がかかってきた。

「もしもし」

「おう、俺。時間なんて誰にも聞いてないけど。つーかそれで帰りが8時を認めていることに気付けよ」

 笑いながら話す歩。

 ちくしょう、賢い。

 声の後ろにガヤガヤと教室っぽい音がしている。

「まぁ、認めるけど。なんでそんなことまで知ってんの?」

「自分の目で確認したから」

「どうやって?」

 すると歩はしばらくクスクスと笑って、

「窓だよ、窓。お前が帰れば部屋に明かりがつくからわかるんだ」

 ほわっと心が温かくなる。

 私も窓を見て何度も歩の存在を確認していたから。