「それって……つまり、別れるってこと……?」

 わかっていても、確認せずにはいられなかった。

 首を横に振ってよ。

 違うよって否定してよ。

 わずかコンマ数パーセントの可能性にすがりつく。

 しかし……。

「そうなるな」

 それだけ言って、歩は部屋を出ていった。

 その場にへたり込むと、フローリングがやけに冷たく感じた。

 ドア越しに歩の爽やかな話し声が聞こえる。

 やがて玄関の扉の開閉音がして、彼は桐原家から出ていってしまった。

 涙を拭うことすら忘れてしまい、頬を伝い顎から床に滴が落ちた音で我に返る。

 乱暴に目をこすると、つけまつげは取れ、手の甲がアイラインやマスカラなどで黒く汚れた。

 面倒になってつけまつげを両目分剥がし、テーブルに放る。

 汚れた手はそのままに、フラフラとベッドに移動した。