帰宅するなり私は、晩ご飯を無理に腹に入れて歩の部屋へ駆け込んだ。

 歩は血相を変えた私を見て、

「お前顔ヤバいよ」

 と笑った。

 それに何となくホッ。

「うるさいな」

 そう言って歩のベッドに潜り込んだ。

 歩の匂いに包まれて、溶けてしまいたかった。

「歩、来て」

「俺今忙しいの」

「いいから、来て」

 駄々を捏ねる私に呆れ顔で応えてくれる。

 そんな歩にガッシリとしがみついた。

「どうしたの? 何かあった?」

 答えられるわけがない。

 首を横に振り、歩の触感と体温と匂いで気持ちを確認する。

 だけど、全く心は晴れなかった。