何とかしなければ。

 こいつの都合のいい人間になってたまるか。

 私は谷村君を睨み続けた。

「俺、そんなに嫌われちゃった?」

「当たり前じゃない」

「悪いようにはしないよ。言うこと聞いてくれればね」

 すでに最低最悪な扱いを受けてるっての。

 歩の浮気疑惑が晴れて、平和な毎日を送れていたはずなのに。

 まさか今度は自分が強制的に浮気させられる状況になるなんて。

「これからよろしくね、恵里ちゃん」

 再びキスをしてこようとした谷村君を思いきり突き飛ばし、私は逃げるように走り出した。

 一刻も早く、歩に会いたかった。

 私は歩が好きなんだよって伝えたかった。