「もう、バカ! ほら、行くよ」

 中途半端な関係なのに、ここで勘ぐられるのはイヤ。

 こんなところで歩の口から答えを聞くのはもっとイヤ。

 だけど、私のこの言い方が、

「私たち、何かしらあります」

 と言っているようなものだと気付くのに、そう時間はかからなかった。



 先に外に出ると、歩も後からついてくる。

 もわっと夏のにおいがして、夕方の柔らかい日差しが肌を包み込んだ。

「で、どこ行くのよ?」

「さぁね」

 さっき母に答えたような言い方をする歩は、

「俺について来い」

 と言わんばかりに歩き始めた。