「西山効果なんじゃない?」

 聡美はシャーペンをクルッと回しながらこうコメント。

 聞いたこともない専門用語が出てきた。

「何よ、西山効果って」

「西山と付き合うことによって生まれた効果」

「はあ?」

「落ち着いたってことよ」

 落ち着いたって言われても、私は以前と何も変わっていないつもりなのに。

 どこがどう落ち着いたというのだろう。

「この年の男たちはね、落ち着いた大人の雰囲気の女に惹かれたりするもんなのよ」

「大人って、あたし同い年だし」

「雰囲気よ、雰囲気。あんた最近大人しくなったじゃない」

 そう言われてみれば、聡美とクラスが離れてからは教室でキャーキャー騒いだりすることもなくなった。

 歩じゃなくて聡美効果なんじゃないだろうか。

 あるいは、老けたか。

「ま、人生には三度モテ期が訪れるっていうじゃない。今が一回目。あーうらやましい」